幼女戦記 小説2巻(後) 漫画11~巻 【 感想 | 書評 】




(要約)

新たに新編された第203航空魔導大隊。

ダキアでの実弾演習を無事終え、(北方戦線・対レガドニア協商連合戦線・ノルデン戦線)でも大活躍!

一段落つくと同時に、お次は(西方戦線・対フランソワ共和国戦線・ライン戦線)に投じられることに…

予備知識1(軽便鉄道)

この巻から良く出てくる『軽便鉄道』という言葉ですが、実はこの幼女戦記を読むまで知りませんでした(汗)

ウィキを読む限りでは、全く以て意味不明な鉄道ですね。

建設費や維持費を抑えるために軽量なレール、急曲線、急こう配になり、狭軸が採用されることが多い。

このため、最高速度が遅く、輸送力も小さく、軌間が違えば乗り換えもしなければならず不便と。

鉄道の良さって、大量輸送にあるんじゃなかったっけ???

良いところ全滅じゃん…。

そりゃあ現日本では絶滅種なわけだ…。

予備知識2(アレーヌ市)

恐らく軍事的にはワルシャワ蜂起で、地理的にはアルザス=ロレーヌが元ネタかなぁと。

何より『アレーヌ・ロイゲン地方』(2巻p418)って、アルザス・ロレーヌと語感が似てると思うんだ(笑)

アルザス・ロレーヌは、フランスとドイツの国境沿いで、しばしば係争地になっているほどには両国に縁がある。

アルザス=ロレーヌ鉄道と、なかなかの鉄道網も有している。

アレーヌ市と似てるよね??

予備知識3(いかに、新時代に適応するか?)

デグレチャフ魔道少佐が発案し、ゼートゥーア少将閣下が提唱した『消耗抑制ドクトリン』によって、帝国軍はその目的を変えざるおえなくなりました。

それまでの都市などの拠点を制圧することで降伏を促す方法から、継戦能力を喪失させることで降伏を促す方法へと。

第2巻時点では、この考えに賛同できる参謀将校のは残念ながら多くはありません。しかしながら優秀な参謀将校です。いずれは、ゼートゥーア少将閣下の言っていることが理解できてしまうと、ゼートゥーア少将閣下は考えます。

ちなみにこのパラダイムシフトは、現在も起こっています。

軍事力の有用性でも語られていますが、つまり、国家対国家の戦争から、国家対非国家の紛争へのパラダイムシフトが起こっています。

拠点を制圧するための、人的資源を損耗させるための、テロリストを排除するための武装や軍の組織は、それぞれ同じではありません。

『軍隊が、誰を相手にその暴力装置としての役割を発揮するのか?』

時代に応じた軍組織の有りようが求められているのです。

それを考えると、現在はどの国の軍組織も似たりよったりですよね。

未だに、国家対国家の概念で軍組織は動いているということの証左でもあります。

予備知識4(作戦名)

回転ドア作戦とか、何というネーミングセンスの無さとか思っていました。

が、史実は更に酷い(笑)

まず講評拒絶級といえば、日本軍など。

モ号作戦、ケ号作戦、い号作戦などなど。

作戦名から作戦内容を推察される情報漏洩のリスクを嫌ったわけですね。

従って、ネーミングセンス以前の純軍事的問題により講評拒絶。

で、史実ドイツ。

あしか(ゼーレーヴェー)作戦、赤髭(バルバロッサ)作戦と、日本語に訳するとあまりかっこよくない作戦名になってしまいます。

ドイツ語はドイツ語で聞かないとダメですね(笑)

ドイツ語で聞く限りはカッコいい!

一方、厨二病をこじらせたのが、史実米国や英国。

想像を絶する作戦(英国)、不朽の自由作戦、砂漠の盾作戦と、もう、全力解放モノです(笑)

もちろん、国だけではなく時代や状況によって作戦名も変わるわけですので、本気でとらえないでくださいね!

予備知識5(陸海軍の違い)

陸軍というと、陸上兵器しかないとついつい思っちゃうんですが、ヘリコプターとかの航空戦力ってありますよね。

陸軍は、あくまで『主たる戦場が陸である』程度の意味合いしかありません。

海軍は、軍艦が主力だから海軍なのではなく、主たる戦場が海であるから、海軍なのです。

だから、なんというか、その。

陸軍が戦艦を持っても、それが陸軍にとって必要なのであれば、問題無いのであります。

…そんなときは、よほど海軍が信頼ならない、ということの裏返しでもありますが(汗)

あるいは上陸部隊。

上陸したら陸が戦場なので、陸軍管轄。

上陸するまでは海が戦場なので、海軍管轄、と考えると、史実のアメリカが『海兵隊』として独立させたのも納得です。

が、こんなことは軍事大国アメリカにしかできないことです。

だって、日本(海外領土を持たない国ならどこでも)でもし海兵隊を独立して作ったら何といわれるか。

『上陸部隊だって?!侵略戦争でも始めるのか?!』と言われるに決まってます。

とはいえ、日本にも島嶼部を抱えますので、島嶼奪還(国土防衛)を目的とした上陸部隊が(陸自隷下水陸機動団)存在します。

でも、海兵隊として独立するほどではないですよね。

その可能性やら頻度やらを考えれば、明らかに費用対効果が薄いのですから。

また、航空戦力はちょっと特殊ですよね。

空軍の究極的な本質は対地支援や対艦支援ですから、陸軍が航空戦力を持つことも、海軍が航空戦力を持つことも、全く不思議ではない、というか当然のことなのです。

ですから、航空母艦(空母)は海軍に属しますし、空母に着艦できる戦闘機等は海で活躍することを念頭におかれた航空戦力なわけですから、海軍に属するのが通常です(もちろん国によって違う!)。

純粋な空のみを戦場とする航空機って、意外と少ないんですよね(戦闘機対戦闘機ぐらいか)。

例えば、母艦から出撃してきた敵戦闘機を撃滅するためだけの戦闘機であれば、それは別に海軍に属しても何も問題は無いわけです。

普通はそんなことあり得ない(用途を限る戦闘機とか、無駄遣いにもほどがある。今の時代はマルチロールファイターだ!)ので、戦闘機(多任務戦闘支援機)といえば空軍!なんですが。

大まかな話の流れ(以下、ネタバレ)

曳火砲弾を敵に投射させるターニャたん

一言でいうと面白いです(笑)

これでもかというぐらい描かれていますので、ぜひお読みください!

簡単にいうと、

対共和国戦線である(西方)ライン戦線で味方地上軍の支援任務をするはめになった第203航空魔導大隊ですが、その支援任務中に、

『敵陣地にいる自分たちごと砲撃しても良いから、とりあえず敵に砲弾をプレゼントしてくれるかなぁ?』

というターニャちゃんのお願い。

ゼートゥーア少将閣下なら喜んで引き受けるのでしょうが、普通の人には考えられないわけですよね(笑)

ターニャちゃんだけならいざ知らず、大隊員に誰もあたらないというのが凄いんですが。

しかもただの砲弾じゃない。

砲弾が空中で炸裂し、大量の破片を目標範囲にばら撒く曳火砲弾…。

いやはや、ものすごい練度です。

前線で戦争をしながら教導隊の真似事、新兵訓練をするハメに

ライン戦線で、何とまさかの新兵教育が、西方方面軍司令部より下命されます。

ただ、問題なのは新兵の教育内容

ここでもデグレチャフ魔道少佐のディスコミュニケーション振りが遺憾なく発揮されます。

ここらへんはweb版(第30話)の方がより丁寧に解説していますので、ぜひ、こちらも読んでくださればと思います。

※ ここらへんのくだりは漫画版と原作で異なります。個人的には原作の方が単純で好き。以下、原作の場合。

ターニャちゃん視点

『夜戦』

命令者視点

『野戦』

うん、もうこれ以上の解説が必要だとは思えない(笑)

かくしてデグレチャフ魔道少佐は、夜間塹壕戦を新兵に経験させることとなります()

しかも二個班だけは別任務として『シャベルを使った友人との語り合い』作戦()

そして、これによる損失はというと、

新兵二名(戦死)

ベテラン一名(ただし、前日に食べたジャガイモによる食中毒)(後送、要長期療養)

上司からは奇跡的な損耗率と評されますが「二度とやるなよ?」といわれてしまいます(笑)

そしてこのベテランの穴を埋めるべく、新兵組からグランツ魔導少尉が補充されるに至ります。

可哀そうに(同情)

第203魔導航空大隊の隊員共は、『あの募集広告』を読んで入隊したある意味自業自得組なわけですが、グランツ君はそうじゃない普通の良識人なのに…。

可哀そうに(心より同情)

ま、それを言うと、セレブチャコーフ魔導少尉もそうだね。

多分、志願して副官になったわけじゃないと思われるからね(同じ女性同士で、かつ初期ライン戦線でペアを組んでいたからという理由で、上層部が気を利かせたつもりなんだろう)。

しかし、良い意味でも悪い意味でも、セレブチャコーフ魔導少尉は隊長たるデグレチャフ魔道少佐に汚染されているので、

きっとグランツ君も、第203魔導航空大隊に馴染むだろうね!(妙な確信)

帝国軍のパラダイムシフト

一方で、帝国軍参謀本部ではゼートゥーア少将閣下が爆弾を会議室に投下していました(笑)

それまでの戦いといえば、敵拠点の制圧が軍の目的でした。

要するに、占領ですね。

これが、勝利の定義でした。

ところが、これでは戦況が動かなくなってしまいました。

『対共和国戦において、塹壕への正面攻勢はこちらの損害が大きすぎる』

かといって、

『砲兵によって塹壕を荒地にするにも補給線が持たない』

陸軍だけでどうにもならなければ、海軍は?というと、

『海軍を使って揚陸作戦という手は有効だが、それをすると連合王国が介入する』

というジレンマ。

それこそ世界大戦に発展し兼ねないという危惧(最終的には余裕で参戦してくるんですけどね)

そこで、勝利の定義を変えるべきだと、ゼートゥーア少将閣下はいいます。

こちらの人的資源の損耗を抑え、

敵の人的資源や物資を失わせることを軍の目的にするべきだ(敵の継戦能力を失わせる)。

敵の出血を強いる。

負けない戦いをすることを、勝利と定義するべきだと。

そう、つまりは、塹壕を突破する必要などないのです。

塹壕を守る兵士の数を減らそう。

そう考えたわけです。

ならば、いかにして兵の数を減らすか。

『誘引し、包囲殲滅する』

勝利を得るために、後退し敵を誘引するわけです。

占領を勝利の定義とするならば、あり得ない手段ですね。

後退するんですから。

土地を守ることに拘泥しないわけです。

恐るべしゼートゥーア、です。

もっとも。

これは、全て軍大学のときにたかが生徒でしかなかったデグレチャフ魔道少佐の発案なんですがね!

アレーヌ市武装蜂起

参謀本部ではゼートゥーア少将閣下らによる強制的パラダムシフトが行われ、デグレチャフ魔道少佐は新兵教育に勤しんでいる中、

『帝国によっての補給の要所である(ライン前線後方にある)アレーヌ市で、武装蜂起が発生

します。

しかも共和国軍魔導師

補給が滞れば兵士は飢えますし、車は燃料がやってこないので動かせなくなります。

そう、どうしようもなくなります。

帝国軍は、覚悟を決めます。

パルチザンに市街戦をやられては長期戦は避けられません。

しかし、1日でも食糧が無ければ、1日でも燃料がやってこなければ、その間に共和国軍がやってきて恐ろしい事態になることは目に見えています。

帝国軍に一秒たりとも猶予はありませんでした。

降伏するならよし。

降伏しなければ、アレーヌ市ごと焼き払ってでも鉄道網を回復させる、という覚悟を。

そして恐ろしいことに、アレーヌ市武装蜂起に対する解決案を、デグレチャフ魔道少佐が軍大学生だったときに既に作成していたり…。

この事実を先輩である西方方面軍軍団長にあらいざらい話してしまったゼートゥーア少将閣下。

結果、西方方面軍軍団長は発案者たるデグレチャフ魔道少佐に、アレーヌ市殲滅戦の先鋒たれを命じます。

胃痛に悩まされながら(笑)

ああ、可哀そうな西方方面軍軍団長(ウラーゲリ上級大将、北方方面軍軍団長とは違って名前も階級も明かされなかったですね)。

せっかくなのでこのあらいざらい話されたときの軍団長閣下と少将閣下のやり取りも小説にしてくれれば良かったのに、残念ながらありません。

あるのは化け物じみた幼女に恐れ戦きながら命令を伝える軍団長閣下と、必死の笑いを堪えるデグレチャフ魔道少佐との間で交わされるやりとりだけです(笑)

胃痛同盟盟主たるレルゲンに、西方方面軍軍団長が追加されました、おめでとう!

…あ、でも、北方前線でデグレチャフ魔道少佐が軍法裁判にかけられたとき、法務官や外交官らにも果てしない胃痛をプレゼントしているか。

そして、さすがは老獪なデグレチャフ魔道少佐。

今回は、戦後自身に責任が及ばないように、第203航空魔導大隊自身は『何もしません』

ただ、パルチザンと支援魔導師を叩き、降伏勧告をするだけです。

そして、市民の退避勧告をするだけです。

そして、これらの勧告が受け入れられることはありませんでした。

アレーヌ市には『パルチザンしかいない』

そう見做されたアレーヌ市は、あとはもうただの砲兵の演習場となるだけでした。

恐るべき、ゼートゥーア

『回転ドア作戦』(『衝撃と畏怖作戦』とも)

フランソワ共和国軍を大いに損耗される作戦の名前。

作戦内容は次のとおり。

アレーヌ市での惨劇を作戦に組み込むあたり、参謀本部の悪魔性で垣間見えるというものです。

  1. アレーヌ市での武装蜂起が成功したと周辺国に喧伝する
    (もちろんプロパガンダ、大嘘。アレーヌ市はもはや無く、鉄道網はフル稼働できている)
  2. 救援という大義名分を得た共和国軍は、こちらに大規模進軍してくる
    (補給線も断たれていると思っているからね!共和国軍は楽勝気分だろう!)
  3. 意図的に一部の前線を後退させる
    (共和国軍は自分らの進撃による成果だと勘違いするから、イケイケドンドンだぜ!)
    (第203航空魔導大隊が殿を務めるよ!)
  4. 後方にある敵司令部の直撃(『衝撃』作戦)
    (これで共和国軍の前線部隊は混乱する!俺達はどう動けば良いんだ?!ってね!)
    (第203航空魔導大隊が敵司令部を撃破するよ!)
  5. 後退によって誘引できた敵軍を包囲し、すり潰す(『畏怖』作戦)

まさに、敵兵の損耗極大化を考え抜いた作戦です。

第203航空魔導大隊の活躍は、それはもう、面白いこと請け合いです。

デグレチャフ魔道少佐にとっては、殿(しんがり)任務を、アレーヌ市のことを知る者への口封じなのではないかととらえ、ちょっとした疑心暗鬼モードに入りますから(笑)

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